臍帯(へその緒)の医療活用のメリット

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細胞治療のソースとして胎盤と胎児をつなぐ組織である臍帯(へその緒)の可能性

出産の際、お母さんと子どもをつなぐへその緒。日本においては、出産後は記念に桐箱に入れたり、そのまま破棄してしまうなど、へその緒を活用することはほぼありませんでした。しかし、へその緒が持つ細胞が、自分の家族(子どもも親も)や、まったく知らない誰かの病気を治療する薬の原料になることがわかっています。

へその緒(臍帯)由来の間葉系幹細胞(MSC)を使った細胞医薬は、難病治療やサルコペニアなど、エイジングによって起こる症状の改善などへの活用ができます。

造血幹細胞の源になる

臍帯には、新生児の骨髄に存在する造血幹細胞が豊富に含まれています。
これらの造血幹細胞は血液細胞を生成する能力を持っていて、重篤な血液疾患や免疫系の疾患の治療への活用ができます。
造血幹細胞移植は、白血病やリンパ腫などのがん、再生不良性貧血、免疫不全症候群などに対する治療法として有用です。

他の組織や細胞の源になる

臍帯には造血幹細胞以外にも、脂肪細胞、間葉系幹細胞など、他の組織や細胞へと姿を変えて機能する幹細胞が含まれています。これらの幹細胞は、将来的な再生医療の研究や治療法の開発に貢献する可能性があります。

生きている人間を傷つけてしまう骨髄移植と違い、ドナー(母子)を傷つけない

難病治療のために生きている人間の”骨髄”が活用されることをご存知の方も多いと思いますが、骨髄は、ドナーから採取する際に、ドナーの体を傷つけ、また、骨髄を提供するドナー側の身体機能にダメージを与えるリスクもゼロとはいえません。

臍帯は、出産の際に採取でき、もともと切り取って破棄しているものなので、妊婦さんの体も産まれた子どもの体も傷つけることはありません。

骨髄よりもパワフルで安全

臍帯は胎児の細胞であるため、骨髄や脂肪由来の間葉系幹細胞(MSC)に比べても若くて増殖能が高いので、短期間で細胞を増やし、よりたくさんの原料が作れます。

MSCは炎症部位に集積してサイトカインストーム(病原菌(ウイルス等)が入って粘膜細胞がダメージを受けた際、様々な免疫反応を起こして病原菌を排除する作用が過剰に働き、自身の細胞も不必要に傷つけてしまうこと)を沈静化する性質を持ちますが、臍帯由来MSCは集積性が極めて高いのも特徴です。

また、免疫原性(異物が体内で免疫応答を引き起こす力)が低いこと。免疫原性の低さはMSCに共通した特徴ではありますが、骨髄由来MSCだと炎症環境下で免疫原性が少し上がってしまう一方、臍帯由来MSCはそうした環境でも免疫原性を抑えることができ、体内に入れた際に異物と認識して拒絶反応を起こしてしまうリスクが低いと期待されています。

培養・移植する際のウイルス汚染などが抑えられる

完全無血清で培養可能なので、培養している際に細胞が未知の細菌やウイルスに感染するリスクを最小限に抑えることができます。

半永久的に冷凍保存できる

廃棄物を医療資源として有効活用できるのでサステナビリティという観点でもメリットがあり、また、凍結保存することで臍帯ごとに半永久的に備蓄できるという特徴も。医療産業として考えても、国内で原材料を確保できること、必要な時に必要な量を製造できることは非常に大きな利点でもあります。

ゲノム情報の保持

臍帯には新生児のゲノム情報が含まれており、これは将来的な遺伝的研究や治療の進展につながる可能性があります。

他の家族の治療にも利用できる

臍帯の造血幹細胞は、赤ちゃん本人だけでなく、同じ家族の他の兄弟姉妹や親族の治療にも利用できることがあります。これを”家族用移植”と呼びます。

従来、治療法や薬が確立されていなかった疾病にも立ち向かえるチャンスを拡げる、古来から存在しながらももったいなくも活用されてこなかった臍帯が、今後、様々なイノベーションの立役者となる未来がすぐそこに見えています。

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